コントみたいな展開が面白い(画像がウェブから)
『鎌倉殿の13人』も第4話が終わって
物語は打倒平家へと突き進みます。
北条家で居候していた源頼朝がいよいよ
挙兵します。そのさいのセリフが面白い。
これから言うこと誰にも漏らすな。
よいか、今まで黙っていたがわしが
一番頼りにしているのは実はお前なのだ。
そう言って会う人みんなにそう言う佐殿。
面と向かって源氏の棟梁からそう言われると
誰だって感激しないわけないよね
・・・という場面。
土肥実平、岡崎義実、佐々木盛綱などなど
同じように頼りにしていると言って
ぐっと抱き寄せるわけです。
嘘も誠心誠意つけば誠になる。
内心いやいやながら心から頭を下げる、
自分の演技に満足気な佐殿。
当初の見込みよりも少ないけれど
なんとか兵も集まっていよいよ伊豆の国での
挙兵となるわけです。
これは鎌倉幕府が成立したのちに
御恩と奉公と呼ばれる関係性。
将軍と御家人の関係が成立する
以前のことです。
ここで疑問が生じます。
どうして坂東の武士たちのうち何人かは
佐殿の呼びかけに応じて集まったのでしょうか。
その答えは
源氏棟梁である源頼朝が
土地ごとにその武士の権利が保証されるから。
佐殿は誰もが認める尊い(偉い)存在でした。
20年も昔のことですが朝廷で
右兵衛権佐(うひょうえのごんのすけ)という
官位に就いていました。
だから佐殿と呼ばれるわけです。
土地はどうなるのじゃ。
小栗旬さん演じる義時が土肥実平を訪ねた際も
そう言って心配しています。
坂東の武士にとっての関心ごとは土地。
自分たちが領有している土地の支配権を
認めてもらうことです。
キーワードは「荘園」です。
詳しく解説しますね。
荘園ができる以前は日本の土地(農地)は
すべて朝廷が持っていました。国有です。
土地も人も朝廷のものとして農民には
口分田として貸し出していました。
その口分田から穫れたお米を祖として
朝廷に納めるのが決まり。
祖って税のことです。
その税負担がかなり厳しかったんです。
祖以外にも特産品や布。
地方の国府への工事や兵役など。
借りた米もみにも利息をつけて
返済しないといけないぐらい。
結果、土地から逃げてしまう農民が増加。
耕す人がいなくなるんだから土地は
荒れるばかり。
税収が減る朝廷は困ってしまいます。
そこで新しい法律を施行します。
それが「墾田永年私財法」です。
新しく耕した土地はすべてその人のものになるって法律。
今までの真逆です。
そうなるとお金持ちがはりきりだします。
都近くの寺院や神社。貴族が開墾に乗り出します。
1.新しい土地探し
2.付近の農民や逃げ出した農民の募集と雇用
3.耕作の実行と管理
どんどん未開の地が開けていきます。
広がっていく農地や近隣の村を含めて
荘園を形成していったんです。
大農園の開発特区です。
平安時代になると荘園からは税は入ってこなくなります。
藤原氏など特権貴族の直接、自分の収入になっていきます。
貴族だけでなく地方の豪族も同じようなことを考えた。
それが寄進。
名目上は貴族の土地にして自分は土地の管理人という
身分になるわけ。貴族の土地は朝廷への祖はいらないし
貴族へのお礼だけで済みますから。
ただ乱立した開発は長続きせず失敗もあります。
あちこちでばらばらだった開発者がまとまっていきます。
地方の再開発です。
ますます寄進が進み貴族は羽ぶりがよくなります。
そのうち隣りあう土地の境界争いや
在地役人との争いが頻繁に起こるようになります。
そこで自分たちの土地は自分たちで守る、
そんな農民が出てきます。
これが武士の始まり。
より有力な人と主従関係を結んで武士団を
形成していきます。
伊豆の国でいう北条家や伊東家がそれです。
あらためて確認してみると
1.新しい土地探し
2.付近の農民や逃げ出した農民の募集と雇用
3.耕作の実行と管理
現地(地方)でこの仕事に従事しているのが
武士なんです。
だから武士はディベロッパーって存在なんです。
開発業者ってこと。
都の貴族や大寺院などは
資金力のあるスポンサーといえます。
そして平安時代後半。
『鎌倉殿の13人』で描かれている頃。
貴族に加えてスポンサーとして登場するのが「院」。
お寺じゃです。
天皇の位を譲った上皇や法皇です。
実は朝廷の最高位である帝(天皇)では
私有財産を持てなかったんです。
収入の減る一方だった帝は自らが譲位する
ことで有力なスポンサーに変身して寄進を
受ける立場になっていました。
西田敏行さん演じる後白河法皇さまがそれ。
一方で松平健さん演じる平清盛。
全国の平氏を束ねる武士の棟梁であり
朝廷では最高位である太政大臣。
国内屈指のディベロッパー会社の社長で
最高に権力のある貴族スポンサーです。
まさに最強です。
そんな清盛と流人の佐殿をたとえて。。。
富士山に犬の糞が喧嘩をうっているようなものだ。
俺は糞にたかるハエにはならぬ。
そう言って佐殿の挙兵の誘いに
賛同しない、山内首藤経俊の思いも
もっともと言えますね。
ということで・・・
当時の背景を整理してみました。
物語の理解が深まると嬉しいです。